100回記念企画vol.10「地方のまちづくりに携わる人々に、“公私混同”で関わり続けるということ」牧尚史さん

チームファンタジスタは2013年からスタートし、2022年には10年目を迎えます。毎月開催している「F-MTG(ファンタジスタミーティング)」は、2021年11月で記念すべき100回に達しました。

今回は100回に合わせた特別企画「“遊ぶように働き、働くように遊んだ"わたしたちの軌跡」と題して、ファンタジスタメンバーのインタビューをご紹介します!

第10弾は、牧尚史(まき たかし)さん。穏やかで優しい雰囲気を持ちつつ、ご自身の好きなものをしっかりと見据え、想いを形にする経験を積み重ねている姿は、ファンタジスタメンバーの刺激となっていること間違いなしです。これまで仕事で関わった地方都市の人々と関係を築き、継続して関わり続けている姿が印象的な牧さん。その原動力や、牧さんが愛着を感じる地域との関わりについて、お話を伺いました。



みなさんこんにちは!動物大好き、牧尚史(まき たかし)と申します。JR東日本に2007年に入社し、16年目となった現在は東京駅や新宿駅といったターミナル駅の開発を担当しています。就職活動当時、JR東日本を志望した動機が「街にインパクトを与える開発がしたい」だったので、今の仕事は「まさに、やりたかった仕事!」…なのですが、実は僕の関心はターミナル駅の開発だけでなく、長野や新潟といった地方の地域にも根強くありまして…。

愛媛県生まれ、奈良県育ちという生い立ちも一因かもしれませんが、僕はかなりの地方好き。そんな“好き”の気持ちから、これまでいくつかの地域に関わり、活動をしてきました。今回は、それらの活動を通じて、地方のまちづくりに携わる人々に“公私混同”で関わり見えてきた世界について、少しご紹介できればと思います。


「地域の人と一緒にまちづくりを考える楽しさ」に気づく

地方のまちづくりとの関わりは、2011年に上信越地域を管轄する工事事務所に異動してから始まりました。地方ターミナル駅の開発に向けて、マーケット調査により駅周辺の開発ポテンシャルを検証したり、具体的に図面を起こして開発計画を作成したりする仕事でしたが、現場感に欠けた机上の空論になっていたのか、なかなか成案に至らずなんだかモヤモヤする日々を過ごしていました。

そんなモヤモヤした気持ちを抱えたまま、翌年2012年に長野支社に異動し、長野駅善光寺口開発に携わることになりました。異動してすぐはちゃんと成果が出せるか不安がありましたが、結果的にはそこで関わったプロジェクト、“信州100stories”が、僕にとって大きな転機になったのです。


“信州100stories”とは、長野県・長野市・JR東日本グループが連携し、長野駅全体を舞台として信州各地の魅力発信に取り組むプロジェクトです。その中でも特に僕が注力したのは、「ホテルメトロポリタン長野」の2階パブリックスペース全体をギャラリーに見立て、床や壁を信州の工芸品や地酒、信州ワインなどで彩るプロジェクト。出来上がったそのスペースを、僕たちは「信州四季回廊」と名付けました。

このプロジェクトには、地域にゆかりのある多くの方が関わっていました。信州の魅力発信のためならと、長野を拠点に活動するデザイン事務所「トドロキデザイン」の轟さんがトータルコーディネートをしてくれ、信州ゆかりの工芸作家の方々とともに作り上げました。木曽漆器職人のおじちゃんたちは真剣に制作するあまりに、途中ぎっくり腰になってしまうというハプニングも・・・。そんな地域の皆さんの地元愛に触れながらまちづくりについて一緒に考えた時間は、本当に楽しくワクワクしっぱなしで、今でも忘れられません。

(漆パネル組み合わせ作業)


今振り返ると、この経験が「地域の人と一緒にまちづくりを考える楽しさ」に気づくきっかけになったのだと思います。それまでの仕事は机上で考えることが多く、地域の方と直接やりとりをする機会は少なかったのですが、いざ地域に飛び込んでみると、地域の皆さんがJR東日本に寄せる期待を肌で感じることができ、自分の仕事の価値を再認識してモチベーションが大きく上がったことを思い出します。また、信州の魅力発信という共通の目標に向けて地域の皆さんと一緒に取り組む感覚が、僕の好きなチームスポーツに似たものだったこともあり、「こういう仕事をまたやりたい!」という想いを強く持つようになりました。


白馬村での運命の出会い

長野でのプロジェクトを終えた2015年には、本社事業創造本部の都市開発を担当する部署に異動しました。異動後しばらく経った頃に、僕の地方好きを加速することになる一言が、ファンタジスタ創設者の村上さんから発せられます。当時のやり取りは、こんな感じだったでしょうか。

村上さん「長野県の白馬、好き?」

牧「(ん、なんで急に?でもまあ…)好きと言えば好きです。」

村上さん「じゃあ、今週末白馬行く?」

牧「(え、よくわかんないけど…でも面白そう!)行きます!」

そう答えたものの、実際には誰が行くかも何をするかも聞かされぬまま、その週末に白馬に行くことになりました。今思えば、仕事以外の新しい刺激を求めて直感的に返事をしたのだと思います。また、村上さんへの全幅の信頼があったことも大きかったのでしょう(笑)。この時、僕はファンタジスタの一員になりました。


そしてその白馬にて、運命の出会いを果たします。

そう、それはファンタジスタメンバーの中ではおなじみの柴犬、白馬のふうちゃん!です(本名:風(ふう)、性別:メス)。

(ふうちゃん春夏秋冬)


ふうちゃんは、2008年6月に白馬の陶芸窯「風庵(ふうあん)」に生まれ、子犬の頃に白馬の名物レストラン「ハミングバード」を経営する蓮井さんの家族になりました。ふうちゃんは物静かで人に媚びず、いつも凛とした雰囲気を醸し出しています。白馬に行ったらふうちゃんと必ず散歩し一緒にご飯を食べて、僕にとっては至福のひと時を…


と、すみません、大きく脱線してしまいました。

本当の運命の出会いは、Webメディアやクリエイティブ事業を展開する会社、Qetic代表の宍戸さんと、ふうちゃんの飼い主の蓮井さんとの出会いです。


宍戸さんは東京に居住する方ですが、一方で白馬村にも想いを強く持たれており、当時白馬村の将来を誰よりも深く考え、白馬ジャンプ台を舞台にした音楽フェス「AIMING HIGH HAKUBA」を企画していました。「東京の方が白馬村のために、ここまで地域に入り込んで真剣に取り組むのか!」と驚いたことをよく覚えています。そして宍戸さんを全力で後方支援する蓮井さんは、東京から来た初対面の僕たちを大歓迎してくれ、白馬村のまちづくりについて熱く語ってくれました。

そんな二人の熱い姿に触発され、僕はその後も自然と東京から白馬に通うように。「僕も何かフェスを盛り上げるお手伝いをしたい!」という思いから、JRとしてできることがないかを考え、「AIMING HIGH HAKUBA」の開催に合わせてフェストレインを走らせる企画を会社に提案しました。しかしながら、その企画は通らずあえなく撃沈。それでも宍戸さんや蓮井さんと一緒に、白馬の将来やJR東日本との連携について議論したり妄想したりできたことは、「JR東日本の牧として」ではなく「一個人の牧として」地域の人と一緒にまちづくりを考える楽しさを教えてくれた経験となりました。


ちなみに、ファンタジスタメンバー有志で参加した音楽フェス「AIMING HIGH HAKUBA」は、残念ながら豪雨により中止となりましたが、そこで出会った彫金作家の方と結婚するという運命の出会いもありました(笑)。



(「AIMING HIGH HAKUBA」コミュニティゾーンにて。

Qeticメンバーとファンタジスタメンバー)


その後も、蓮井さんを筆頭として白馬村の皆さんとは、「E-BIKE」(スポーツバイクの走行性能と電動自転車のアシスト機能をかけ合わせた自転車)による自転車まちづくりやアートホテル構想など、遊びに行くたびにいろんな仕掛けを企てています。個人として、あるいは会社として何か役に立てることはないかなぁと考える時間は、僕にとって人生のモチベーションを上げる特効薬になっています。


地方と繋がり続けるということ

プライベートで白馬にのめり込むことと並行して、会社の仕事では2015年から新潟駅の高架下開発計画に取り組んでいました。そこでは、新潟エリアを管轄する支社やグループ会社から集まった、熱い想いを持つメンバーと一緒にプロジェクトに関わることができ、彼らの志にも触発されて、会社の仕事に対してもモチベーションはMAXに高まっていました。


そんなやる気に満ち溢れていた僕は、白馬での経験を踏まえ、新潟でも「地方のまちづくり“に携わる人々”に公私混同で関わる」ことをテーマに何かやりたいと考え、今度は自分だけでなく、会社のプロジェクトメンバーと一緒に新潟のシェフが企画する料理体験型ツアーやレストランバス、田植えなどに参加しながら、地域の人々と新潟の未来について語り合いました。


(長岡花火“見”弁当づくりツアー)


このように積極的に地域に入り込み行動し続けてきたことで、個人的に新潟の地域の皆さんとの信頼関係が築けてきたと感じていたのですが、そんな矢先、お酒の席である地域の方からこんなことを言われました。


「JR東日本の総合職の人は、どうせ2、3年で異動しちゃうんでしょ。きっと新潟のことも忘れちゃうんだから」


この言葉に僕はハッとさせられました。僕たちの会社は、地域の方からそんな風に思われていたのかと。

悔しかったこともあり、「新潟には関わり続けます!みんなもそんな薄情ではありません!」と言い返しました。地方への送客や都心での情報発信など、都心の仕事に携わっている“からこそできる”地方との連携は、JR東日本の強みだと思います。だからこそ、しっかりと“新潟と繋がり続ける”ことで地道にイメージを払拭していきたいし、それが自分の理想とする地方との関わり方だと、その時改めて思ったのです。この経験以降、僕は今でもその姿勢を貫き、新潟の人たちと関わり続けています。


ちなみに一番思い切ったのは、会社から長期休暇をもらい新潟観光コンベンション協会のスペイン・ビルバオ出張についていったことです(笑)。当時はJRのグループですらない組織に出向していたので、長期休暇について理解してもらうことは難しいかなと尻込みしかけましたが、「一個人の牧として」新潟地域に関わりたいという想いから行動できたことは、とても良い経験になりました。その後も定期的に新潟の人たちに会いに行ったりクラウドファンディングに参加したりして、新潟という地域に関わり続けています。

そうそう、新潟の料理人であり、食のまちづくりの先駆者である鈴木将さんが、食体験に特化した宿泊体験施設「HAKKO HOUSE」を2022年7月に長岡市内にオープンさせる予定なので、皆さんも是非体験を!!


個人的には、公私混同で関わり続けたい地域の仕事を週一だけでもできる制度が会社にあるといいのにな、と思っています。もし制度があれば、JR社員としてより理想的な“地域との関わり”が実践でき、地域の課題解決にも貢献できる可能性が高まるのではないでしょうか。

地域と地域をつなぐ信頼の架け橋として、自分自身があなたの大好きな地域の関係案内人になれたら素敵だと思いませんか?



僕にとってのチームファンタジスタ

以上、僕の「地方好き」エピソードをお話ししてきましたが、公私混同で関わり続けてきた僕の行動の裏には、いつもファンタジスタの存在がありました。2016年にファンタジスタメンバーになってからは、「遊ぶように働き、働くように遊ぶ」を実践するメンバーみんなの姿を見て、いつも感動しっぱなし!です。どんなことでも面白がってくれる仲間に囲まれているせいか、最近は仕事でもプライベートでも、着想が「ファンタジー重視」になっている気もします。


また、これまで僕の「地方好き」な側面についてお話ししてきましたが、冒頭にもお話しした通り、僕は大の動物好きでもあります。動物好きゆえの最近のマイブームは「ヤギさん」。家の近所に春から秋にかけてやってくるヤギ親子がいるんです。その癒し効果に魅了され、都心のターミナル駅に「小さな都市牧場」をつくりたいなぁ、という新たな夢も描くようになりました。どんな風に実現していけるか、いつも妄想しています(笑)。これからも、自分の「好き」を大切にし、公私混同で好きなことに関わり続け、自分がワクワクする行動を積み重ねていきたいと思います。


(武蔵境の農地にて)





牧 尚史(まき たかし)

1982年生まれ。愛媛生まれ奈良育ち。趣味はサッカーと柴犬。モットーは「仲良くなりたい相手がいたら、まず自分から好きになる」。2007年東日本旅客鉄道株式会社入社。地方中核駅の開発に携わった後、現在は東京駅・新宿駅のターミナル駅開発に従事。こうありたいと思うbeの肩書きは「まちのお医者さん」。じっちゃんばっちゃんになっても、身体的にも精神的にも“健康”に、そして生きがい・やりがいを持って暮らしていける社会を目指して、駅を中心としたまちづくりに取り組む。



編集:大沼 芙実子

team Fantasy-sta.

わたしたちは、「遊ぶように働き、働くように遊ぶ」をプロジェクトベースで実践するチームです。

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