「地域活動とビジネスの間で。"次世代に続くこと"を求めて、動き、実践し続ける」Fantasy-sta profiles - 寺田 菜々美 -

感情豊かで素直、そして合理的なビジネスマインドを併せ持つ「行動派」女子である、寺田菜々美さんのこれまで、今、そしてこれから。

自分とは?自分は何が好きで、得意で、何が選択基準なのか。 

20年経っても30年経っても、きっとその正解にはたどり着けない。

それでも、過去のひとつひとつの選択、選んだこと、一緒にいたいと思った人、心の底から共感したフレーズ、そんなことをたどることで、日増しに「じぶん」というものの輪郭が少しずつ見えてくる。

チームファンタジスタでは、何かをやることよりも、その人のやりたいこと、そしてなぜやりたいのかの理由、そして最後はどうありたいのか、そんな“to be”を何より大切にしたいと考えています。 今回は、チームファンタジスタの寺田さんの生き方を、覗き見してみましょう。 


 こんな方は、ぜひ読んでみてくださいね。

 ・地域活性、まちづくりに興味がある 

・今の地域のあり方、既存の活動に対して、何かしら違和感や疑問を持っている 

・地域⇄都会、の二択にとらわれることなく、身軽に生き方を選択したい 

・長野生まれ、長野育ち、長野にご縁のある人


- 寺田さんの「これまで」。 人懐っこさと壁のなさ、相手に対してストレートで素直、しっかり者の印象を与える寺田さん。記憶に残る、自分の学生時代の記憶は、どんなことを考えていましたか?


一見、リーダー役を任されるようなしっかり者の優等生でありながら、内側では、人と同じことが大嫌いで、どこか心の中で反発する、そんな面倒な一面を持っていたと思います(笑)。

レールに敷かれた道を行くことが嫌だなとは思っていたものの、なんとなく大学に進学したので、理論中心の講義とありあまる時間は、自分にとっては、ものすごく苦痛でした。  


特にやりたいことも見つからず、鬱屈とした日々の中、プレゼミでの教授との出会いが、自分の転機になったと思います。日本酒好きが高じて、酔って道で寝ていたり、現場に出ていてほぼ大学にいないという一見「変わりもの」と言われるような先生だったのですが、最初の30分だけで切り上げてしまう講義の内容は本質的で、各集落のキーパーソンからの信頼も厚く、初見で「あ、この人について行こう」と思いました。ここで、色々な地方の限界集落や地域の集会などの現場に同行させてもらい、教科書に書かれた綺麗な理論ではなく、地域ならではの複雑さを身をもって体感できたのは大きかったと思います。


 - 地域に関わる活動をする中で、印象的だったこと、考えさせられたことは何ですか?


例えば、当時大学の研究所があった佐渡では、一度絶滅してしまったトキが、人工放鳥されて、雛が初めて産まれたタイミングで、私も教授について、よく島に通っていました。 

当時、TPPや東日本大震災もあり「地方創生」というキーワードがでてきた時期だったので、地方には一見さんの都会人も多かったし、東京や大企業を批判するある種農民一揆的な地域活動や補助金ありきの組織も多くありました。一方で、地元に根付き、その土地の風土や人と向き合い、日本が目指すべき未来を大局的に語ってくれる尊敬する地域人にも出会えました。

いろいろな活動や人を目の当たりにするなかで、私がなんとなくここで守りたいと感じている「豊かさ」だったり、「本質的なもの」だったり、直観的でぽやっとしている物事を、ちゃんと言葉にして価値化できるように、一度地方を離れてビジネスの勉強をしなきゃいけないんだなと思っていたんです。  


そんな中、大学の説明会にきていたJR東日本が地域活性化をしていると聞いて、最初はなんとなく受けていたのですが、地域での実践エピソードが思いの外受けて、内定をもらうことができたんです。最初は違う会社に行こうと思っていたのですが、同期や先輩社員と話していても、なんだかしっくりくる感覚があって、地方にも基盤のある大きな会社だし、と思い入社を決めました。


- 会社に入ってからは、どんな仕事に関わってきましたか?

入社してからは、新宿駅や上野駅のNewDaysでの実務を経験したのち、「のもの」という地産品ショップの運営をするジェイアール東日本商事という会社の企画部門に出向しました。

各地域に眠っている美味しいけれど、まだ知られていないものを仕入れて、首都圏で販売・発信し、地域メーカーさんと一緒によりよい物や地域を伝える方法を考えていくという、とてもやりがいのある仕事でした。 

当時、販路としては、NewDaysや紀ノ国屋などグループ会社が多かった中、私は外商として一般企業に営業に行かせてもらっていました。物があふれ、消費者の目も研ぎ澄まされている都会で戦ってきた目利きバイヤーから、売れる商品の法則を聞き出し、それをプロダクト化するという作業はとても楽しかったです。


私自身は地方出身で「都会で売れるもの」の感覚が鈍かったので勉強になることばかりでした。更に、日々、大企業ならではの目標設定の方法や数字の読み方、交渉スキル、守らなければいけない法律など、即戦力の高い武器がどんどん手に入ってくるのは、社会の一員になれた気がしてとても楽しかったです。  


仕事以外でも、東京はとても刺激的でした。「いいな」と思った人や物との物理的な距離がとにかく近くて、有名人の講演会はそこら中で開かれているし、テレビでみたお店は電車で行ける場所にあるし、田舎者の私からすると、こんな世界が日本にあったのかという感覚で、平日から休日までとにかく予定を全部埋めまくるような生活を送っていました。


- チームファンタジスタには、そのメンバーの多くが地域に関わる活動に関心を持ち、取り組んでいます。そんなメンバーと出会ったきっかけは何ですか? 

当時代表だった村上さんから声をかけてもらったのがきっかけです。声をかけてもらったといっても、本社で実習していた同期全員にメールがきた感じだったのですが、最初はファンタジスタなんていう名前だから、すごい意識の高いパーティーピーポーの集まりなんじゃないかと戦々恐々でした(笑)。 


実際、周りから「意識高いね」なんて言われることも多いんですけど、自由で意識高くない感じがむしろ自分が通い続けている理由かなと思っています。

感覚としては、お兄さんお姉さんができたようなもので、自分の中で言語化できずにもやもやしていたものがミーティングにいって相談すると、「それってこうゆうことじゃない?」と言語化してくれたり、「私はこうしたよ」と教えてもらえたり、「この人に話をきいてきなよ」と繋げてもらえたり…。両立しているというよりは、むしろ仕事で詰まった時ほど、帰る場所として、ファンタジスタがある気がします。


色々なプロジェクトを先輩たちがやっている中、プロジェクトの一つである「イキダネツアー」には、毎回参加していました。学生時代には行ったことがなかった東北に、こんなに面白い人や文化があったのか!と、目から鱗でした。

イキダネツアーは、自分が「面白い!」と感じた地域人がいれば、興味のありそうな人を誘って、まずは訪ねてみます。そこで、参加者はそれぞれ何かを感じて、またそれぞれの日常に帰っていく、そんな企画です。旅行好きなものの、圧倒的1人旅行派だった自分としては、「自分のしたい旅行に人を連れて行っていいんだ!」というのがまず驚きでした。

ビジネスを前提とせずに訪ねた旅先で、面白い地域人と絶対この人と合うだろうなと思っていた参加者がいつの間にかつながって、新しい活動が生まれているという偶然の場を偶然作れるのが毎回面白いなと思っています。 

イキダネツアーに参加したあたりからは、「平日は働いて、休日はファンタジスタ」のような生活でした。田舎者すぎて恥ずかしいのですが、とにかく自分の世界がどんどん広がっていくのが楽しくて、ファンタジスタ以外にも色々なところに顔を出していました。そうして面白い人にたくさん会い始めると、だんだん自分がやる事を持っていないことが悔しくなってきたんです。


そんな中、楽しい東京生活と東北の行き来で忘れかけていたけど、「地元の長野ってどうなってるんだっけ」と思う中、偶然参加した長野にまつわるイベントで、思いがけず「これだ!」と思える人やものに出会えたのです。


- 「自分のやりたいことは、長野にあり」そう気づき始めてからは、どんな日々になりましたか。


そのイベントを開催していた方々にすぐ連絡をして、しつこいと嫌われるんじゃないかってくらい長野に遊びにいって、面白いことをやっている人を紹介してもらっていました。2019年が明けてからは、ほぼ毎週末、長野に帰っていましたね。  

1番は小布施町というところで、首都圏で働く同世代の若者が集まって街の課題を解決するという経産省のプログラムに参加したことです。

ファンタジスタでは、私が最年少だったので、「先輩はすごいなー」といつも甘えていられたのですが、集まったメンバーはほぼ同い年で、いつものようにふわふわしてはいられません(笑)。

みんな何かしらの特技や専門分野を持っていたので、話していても刺激的で、毎週末東京から小布施に通うのが楽しくてしょうがなかったです。仕事ができる同世代に囲まれて、いい意味で自信を無くしたりもしましたし、自分の強みや伸ばすべき能力も教えてもらうことができました。自分が鉄道のインフラをもつ会社にいるからこそ、注目してもらえることもたくさん見つけることができて、社会人としていい転換点になったと思っています。

このプログラム自体は既に終わっているのですが、メンバーとの活動は今でも続いていて、ファンタジスタ以外に同世代・異業種というまた違った視点で色々相談できる存在をつくることができました。

ふらっと参加した都内でのイベントがきっかけで、長野の面白い人とすごい勢いでつながれたので、年明けくらいからは、どうしたら2019年夏の定期異動で長野に配属してもらえるか?ということしか考えていなかったです(笑)。

 地元の新聞に載り「7月から長野で頑張ります」と先回り宣言してみたり、ファンタジスタの合宿を長野でやってみたり…。それらの効果があったのか、単純に長野にここまでこだわっているのが自分しかいなかったのかはわかりませんが、無事長野支社への異動が決まりました。


- 2019年夏。寺田さんは、長野配属となり、長野での日々が始まっています。今、自分が目指したい自分像、ありたいなと思う姿を教えてください。


ずっと地域での活動を切り口にしていたのですが、最近は、地域に関わることが自分のミッションなのかというとそうでもない気がしていて。それよりも自分は、大学生の時のように、自分が動きまくる中で「もっとこうなればいいのに」や「この人を救いたい」や「面白そう」と当事者意識をもって言えることに、素直に真面目に向かっていきたいのだと思います。 

その片鱗が、今回自分のバックグラウンドでもある長野で見つけられたのは幸運だったと思っています。ちょっと東京で働いたからといって、何ができる訳でもないことを痛感しているのですが、行動派な部分が冷やかし要因と言われないよう、長野での信頼関係を基軸に自分にしかできない仕事を作り上げていきたいです。


ほぼ家にいないので家族からは生き急いでるとよく言われますが、いつか本気で向き合いたいことが見つかったときに手遅れと諦めるのは嫌なので、しばらくは格好が悪くても猪突猛進気味に生きたいと思っています。

 今はまだまだ自分のことで精一杯ですが、がむしゃらに実践を積み重ねていく中で、ファンタジスタに行った時に感じた“なんかイケてる大人”になっていれたら、本望です。  



寺田 菜々美(Nanami Terada)

2016年、東日本旅客鉄道(株)に入社。長野県出身。首都圏駅での実務経験を経て、ジェイアール東日本商事(株)のもの事業部に出向、地産品の営業や商品開発に関わる。2019年7月から長野支社勤務へ。プロジェクトはイキダネツアー担当。 



取材・文 / 大久保 真衣

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