「このままでいいのかな、という気持ちを紐解き、手探りで動く。”楽しさ”の追求を原動力に、じわじわと未来を変えていく」Fantasy-sta. profiles - 宮下 杏子 -

 2019年、チームファンタジスタの合宿で自分の肩書きを考えた時、「絶妙な距離感で人の心と新しいコミュニティに飛び込む探偵」と名乗った、通称「みやねぇ」こと宮下杏子さん。

思わずみんなで「ぴったり!」と言ってしまうほど、隠れた好奇心に溢れ、様々な場所に気が付いたら潜り込んでいる、そんな存在です。

 一見、大人しそうに見えて、好奇心は人一倍。じわじわと動いて周囲の環境を変えていっている宮下さん。どんなきっかけでチームファンタジスタに関わるようになったのでしょうか。そしてそこからぼんやりと見えてきた、自分にとって「いいな」と思う環境とは?

 宮下さんの仕事や活動、そこに至った過程をじっくり伺い、自分自身の想いを形にしていくヒントを探ります。


こんな方は、ぜひ読んでみてくださいね。

・自分のやりたいことを見つけたいが、何から始めたら良いかわからない

・興味のあることをどのように仕事とリンクさせれば良いのか、悩んでいる

・好奇心に溢れており、常に新しいワクワクを探し続けていたい

(写真中央、ソファに座った右側の女性が宮下さん)



ー  宮下さんの「これまで」。好奇心に溢れ、様々な活動に顔を出している宮下さん。そのフットワークの軽さは昔から変わらないのでしょうか?社会人になってから数年の様子と、チームファンタジスタとの出会いを伺いました。


 大学では建築を学びました。高校生の頃、近所に新しく家を建てている家族がいて、家が出来ていく過程を見にきて「もうすぐだね」と話している姿が良いな、と思ったんです。人の印象に残る何かをしたい、ということだったのかな。今の仕事は、建物開発等が決まったプロジェクトについて、設計会社や施工会社の人と話をして、事業主としての要望を伝える役割。でも本当はもっと序盤の、「この場所に何があったら地域に活きるか」ということを考えたくて不動産業界に入ったんです。


 1、2年目はただがむしゃらに働きました。ただ3年目くらいから、自分の世界が狭まっている気がして。「働くって、このまま毎週働くんだな、身になってるのかな?」と思うことがありました。この生活がこの先、何十年も続くと思うと、「あれ。これでいいのかな私」と。なんていうんですかね…つまらなさ、倦怠感のような、何かそういう気持ちがありました。そんなモヤモヤした気持ちを抱えていた頃、グループ会社の百貨店であるグランデュオに出向になりました。そこでチームファンタジスタの村上さんに出会ったんです。

 チームファンタジスタの定例ミーティングに参加した時、メンバーみんなが担当業務に関わらずに社内や社外でバンバン動いているのを聞いて、「こんな働き方あるんだ!」と驚きました。「自分ももう少し頑張ってみようかな」、「本当は何がやりたかったんだっけ?」ということを、ファンタジスタの活動に参加して考えるようになりましたね。この衝撃がその後も参加し続ける原動力で、継続してミーティングに参加するようになりました。



ーファンタジスタに参加するようになってから、ご自身の行動で変わったことはありますか?


 イベントに行くようになりました。知らない人だらけの場所に行くのは気後れするので、最初は会社の人と4人くらいで行って、その後は気になったイベントに仕事終わりや休日にも行くようになりました。次第に1人でもよく行くように。自分自身でその場に行ってみないと身にならないと思っています。

(チームファンタジスタメンバーが企画・運営する「イキダネ!ツアー」で実施した「~味噌造り体験&発酵食ランチ~ イキダネ!釜石 (Vol.13)」に参加した時の様子)


  そんな風に色々なところに顔を出す中で、「高架下に映画館をつくる方法」というイベントで「ねぶくろシネマ」の唐品知浩さんの講演を聞く機会がありました。そこで一緒に行った同期と「こんな風に楽しいこと、会社でも前向きに話したいよね」と盛り上がって。1人ではやらなかったと思うけれど、「一緒にやろう!」と話が進み、結果として社内で立ち上げたのが「高架下を面白がりたい人たちのえだまめの会」というチームです。


ー「楽しいことをやりたい」と言う会話から始まったという「えだまめの会」。どんなチームなのでしょうか。


 ”チームファンタジスタの自社版”です。「えだまめの会」という名前は、芽が出て、伸びて、増えていくという、豆の成長が活動のイメージと近いかなと思って。会社で運営している「ビーンズ」という駅直結の高架下ショッピングセンターがあるので、社員には親近感のある響きです。(ちょうど集まった後に行った飲み屋さんで、”EDAMAME”というメニュー名がかわいいな、と思ったのも理由の一つです(笑))

 2017年から開始し、今年で3年目を迎えました。一緒に面白がれそうな人を誘って、8人程度の飲み会から始めました。徐々にメンバーが増え、今では24名程度がランダムに参加しています。具体的な活動内容は決めていなくて、仕事上の”お悩み相談”や”街歩き”がベースになってますね。あとは最近見つけた面白いネタを話すことが多いかな。それぞれが情報提供し合っています。

 これまでは不定期に開催していたのですが、今後は定例化したいと思っています。方向性はまだ手探りですが、とりあえずお悩み相談したい人の、お悩み相談できる場所にはしておきたいなと。また、「高架下を面白がる」という名前もついているので、自分たちが気になっている”高架下の良いところ”をまとめて、言葉にはしていなかった高架下の魅力をもう少し深掘りしていきたいなと思います。

 今思えば、始めた動機には「同じ会社の人と深く話してみたい」という気持ちがあったのかもしれません。続けることができた理由としては、時々メンバーの持ち込み企画があって。そういう企画があると「じゃあやろう」と持ち直しましたね。コツコツと続けてきました。

仕事をしている時間って、人生の中で長いじゃないですか。どうせ働いている時間が長いならそこを楽しくしたいと思うし、みんなもそう思っているならそういう形に変えたい。あと、同じ感覚が理解できる人が多いと仕事も進めやすいと思っています。そういう雰囲気になったらいいな、という気持ちは原動力になっています。


ー 社外の活動では、何か参加しているものはありますか? 


 2018年から、南池袋公園で開催している「nest marche」のお手伝いをしています。会社でお世話になっている(株)まめくらしの方が運営するマルシェがあると知り、調べてみるとちょうど大きなイベントを控えていたので、ボランティアスタッフ(キャスト)に応募しました。仕事でも開業時にイベントを行うことがあり、自分の担当ではなかったけれども興味はあったので、そういった知見も得られるかなという思いもあり、参加してみました。

 実際に行ってみると、出店者を始め、色々な方とお話ができることがとても面白くて。何度かお手伝いに参加しているうちに、だんだん「自分も出店したい!」と言う気持ちが出てきました。ちょうど、長野県の小諸に住んでいる友人が地方と東京を繋ぐことに興味を持っていたので、一緒に出店してみようかと画策中です。”想いを持って作られたもの”に魅力を感じているんだと思います。もし距離的な問題があってなかなか東京に出て来られない、という事情があるのなら、「じゃあ私が代わりに!」という想いがあります。


 仕事ではやりたいことの"ど真ん中"のことができていなかったので、プライベートの時間はやりたいこと寄りのものを探して学ぼう、と思っています。マルシェのお手伝いで色々な人の話を聞くと、「街の住人が楽しい」というのが一番良いな、と感じてきて。楽しいとか、充実しているとか…「良い人生だ」と思えるように、という気持ちが私にはあるかなと。大学でもゴリゴリの設計というよりは、その中でどう人が使っているか、という研究をしていたので、人に興味があるのかな。

ー ご自身が惹かれるものを追って動いたことで、自分自身の行動にも変化が出ているのではないでしょうか。ご自身の中で、「変わってきたな」と思うことはありますか?


 2018年のチームファンタジスタの合宿で、自分の原体験からやりたいことを掘り下げるワークショップをやりました。でもその時には「やりたいこと」がうまく書けなくて。モヤモヤと何かやりたい思いはありつつも「これ!」というものは見つかっていませんでした。

 (2018年合宿の時に書いた「やりたいこと」)


 それが2019年の合宿では、だいぶ具体的に書けるようになりました。「やりたいこと」だけでなく、その先の「つくりたい未来・社会」まで。「楽しくいきいきした一生が送れる社会」が欲しいなと思ったんです。

思えば、自分のなんとなく惹かれるものを追って動いて来たことで、「これから先、具体的にやりたいこと・在りたい姿」が見えて来たのかもしれません。チームファンタジスタとの出会いがあり、色々なイベントに足を運ぶようになったこと。社内で「えだまめの会」を結成したこと。社外でも「nest marche」を手伝い、新しくやりたいことが見えてきたこと…。自分の目の前にある「面白そうなこと」を追って少しずつ動いてみたことで、しっかりと言語化できていなかった「自分のやりたいこと」を言語化できたのかも。それがやりたいことを見つける近道だったのかもしれません。

(2019年合宿の時に書いた「やりたいこと」)


ーご自身がいいな、と思うものを丁寧に読み解き、じわじわと実現している印象を受けます。ご自身の行動に伴って生まれた周囲の変化については、どう感じていますか?


 会社の雰囲気は、社会情勢や会社の方針もあって、少し変わってきたと感じています。「この人こんなに頑張っているんだ。私も頑張ろう」とも感じることもあります。

2019年からは、会社の創業30周年プロジェクトの一環で、異なる部署から集まった6人チームでどんなことができるかを話し合い、新規事業提案社内コンペ「燈台」をスタートさせました。これも個人的には「えだまめの会」の動機に近くて、会社全体がもっと、やりたいことに前向きに取り組む雰囲気になるといいなと思っています。

 「燈台」のワークショップの参加者と新規事業の応募者は合計約100名で、社員の約15%が参加しました。このコンペは今後も続けることになりそうです!目指していく会社の姿は「チャレンジしたいと思い行動する社員が多く、チャレンジする社員の理解者・ 支援者がたくさんいる、それが当たり前の状態になっている」という姿です。続ける中で「チャレンジする社員を応援する風土」を築いていきたいと思います。まだまだ手探りですが(笑)。

 業務の面でも、郊外の再開発のプロジェクトに携わることになりました。神奈川に「コトニアガーデン新川崎」という多世代交流がコンセプトの施設があり、工事調整の立場で関わっていました。開業以降は担当ではなかったけれど、イベント担当の人たちの動きが見える距離感で仕事をしていたため、その経験が活きるのでは、と上の人が考えてくれたようです。「どういうコンセプトで進めようか」というところから関われていて、ようやくやりたかった仕事につけたと感じています。

 このプロジェクトは、社内で「あれ、いいですよね!」と言われる開発にしたいですが、まずは楽しくやりたいですね。楽しく。街の人も巻き込みたい。チームファンタジスタの岡さんが担当している「阿佐ヶ谷高円寺プロジェクト」の取り組みは、街の住人に向けて面白いことを仕掛けているので、それに続くようなプロジェクトにしたいと思っています。


ー最後に、ご自身にとってチームファンタジスタとはどんな存在ですか?また、これから実現させたいことがあれば教えてください。


 チームファンタジスタは、気軽に行ける場所であり、気軽になんでも話せる場所であり、そしてきっと実りがある、と感じられる場所です。行けばそういう人たちが待っている…かなと(笑)。

 これから実現したいこととしては、今やっていることもまだ実のある活動にはなっていないから、まだもやもやと手探り中なのですが…。「えだまめの会」は定期的に開催したいし、「燈台」のプロジェクトは継続して実施したい。再開発の件も街の人を巻き込みたいし…マルシェ出店計画も実現したいので…。今年もやりたいな、って思っていることは沢山ありますね。まだまだ楽しくなりそうです(笑)。


宮下 杏子(Miyashita Kyoko)

札幌生まれ、さいたま育ち、阿佐ヶ谷在住。2013年、(株)ジェイアール東日本都市開発に入社。主に関東のJR高架下や線路沿線を開発、運営、管理する会社で、商業施設のリニューアル等の施設管理を経験し、現在は神奈川エリアの建物新築や修繕工事の調整を担当。お店のようなメゾネットタイプの家に住みながら、丁寧な暮らしと生き方を模索中。



取材・文 / 大沼 芙実子


team Fantasy-sta.

わたしたちは、「遊ぶように働き、働くように遊ぶ」をプロジェクトベースで実践するチームです。

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