チームファンタジスタは2013年からスタートし、2022年には10年目を迎えます。毎月開催している「F-MTG(ファンタジスタミーティング)」は、2021年11月で記念すべき100回に達しました。
今回は100回に合わせた特別企画「“遊ぶように働き、働くように遊んだ"わたしたちの軌跡」と題して、ファンタジスタメンバーのインタビューをご紹介します!
第8弾は、チームファンタジスタの結成初期からのメンバーである田中絹子(たなか きぬこ)さん。いつも明るくメンバーを盛り上げてくれる存在であるとともに、「日常の中にある彩り」というご自身が心動かされる風景を生み出すべく、着々と行動を続けられています。今回は改めて、「ご自身が心を動かされる風景」に出会ったきっかけや、これまでの活動、そして田中さんのこれからについてお話を伺いました。
こんにちは。田中絹子(たなか きぬこ)です。仕事では、「駅ナカ」や駅近の新規複合ビルの開発に携わっています。ファンタジスタにいることで、メンバーの行動力や考えに沢山刺激を受け、自分自身も様々なチャレンジを実現するに至りました。その経験を経て、「まずは小さい一歩でも動いてみる」「自分が楽しい・素敵だなと思えることに素直になる」をモットーにしています。改めて、自分のやってきたことを振り返ってみようと思うので、お付き合いいただければ嬉しいです。
悩んだ先に見つけた「日常の中にある彩り」という心動かされる風景
私は、元々一人よりも人と一緒に時間を過ごすことが楽しいと思うタイプです。ファンタジスタにも面白い先輩がいることを知り、「色んな人と繋がることで刺激を受けたい!」と思ったことが参加のきっかけでした。当初は、メンバー皆がやりたいことに向かって具体的なプランを立て行動している姿がすごいと思い、羨ましくもありました。活動の中でメンバーが提案する企画は本当に魅力的なものばかりだった一方で、「自分はそんなことを企画できるのか?」「そこまで自分を突き動かすものってなんだろう?」と迷い、自問自答する日々が続きました。
ファンタジスタのメンバーにもそんなモヤモヤした思いを相談していた時、出会ったのが「ストリートピアノ」でした。
NHKの番組でも放映されているのですが、「駅ピアノ」として、海外の駅コンコースやホームに設置されているピアノを見たことはないでしょうか?ピアノの周りに様々な人が寄ってきて、自分の思いを伝えたり、自分なりの演奏をしているんです。日常風景の中にその時だけの“特別な瞬間”が生まれる、その風景を見たとき、「なんて素敵な彩りのある光景なんだろう」と感じました。そして、この光景は様々な人が行き交い、人々の日常に使われている駅だからこそ、より魅力が生まれるのだと感じました。その感動から、「これこそ駅に携わる人間として、私のやりたいことだ!」と気づいたことが、大きな転換期だったと思います。それまでなんとなくモヤモヤしていた「どういう風景がみたいのか?」ということが、ようやく言語化できた瞬間でもありました。
日常に彩りを。ステーションピアノの実現
ステーションピアノ実現までの記録については、インタビュー記事があるので、そちらもご覧いただけると嬉しいです。この時に感じていた高揚感や、「この企画を実現したい!」という強い気持ちは、今も変わっていないと思います。
▶︎田中さんの2018年のインタビュー「行き交う人の日々にささやかな彩りを、いつもの日常に音楽を。新宿駅「ステーションピアノ」実現までの軌跡」はこちら
様々な方の協力を経て実現したステーションピアノですが、今でも忘れられない光景があります。初めてピアノを設置した新宿駅新南口のSuicaペンギン広場で、ある2人の方が交互に演奏を始めたんです。お互い初対面のようでしたが、交互に競い合うようにピアノを弾いていて、最終的には二人で連弾を始めたんです。その曲に合わせて、周りに居合わせた子どもたちが楽しそうに踊っていました。その光景があまりにも素敵で、見ているだけで微笑ましくて。「こういう風景をもっと沢山の場所に生み出したいな」と強く思いました。
多種多様な人が行き交う駅だからこそ、普段であれば交わらない人たちが、それぞれの関わり方でそのひとときを一緒に楽しむことができるって、とても素敵じゃないですか?その瞬間は間違いなく、その人にとって日常に“彩り”が加わった特別な時間でした。その魅力とその瞬間の“ワクワクさ”に、私は魅了されたと思っています。もっとそういった風景を広げていきたい。この魅力ある風景は、駅だからこそ生み出せる日常の中の“彩り”であると、ステーションピアノを通じてより深く実感しました。
ステーションピアノを実現させる為の最初の一歩で飛び込んだ「渋谷ズンチャカ!」では、かけがえのない大切なメンバーにも出会え、私にとって人生の分岐点となりました。この取り組みを通じて、音楽は様々な人を繋げられるコミュニケーションの一つだなと、改めて思うようになりました。
(新宿駅の次に品川駅のコンコースでもステーションピアノが実現)
音楽の次に惹かれたのは…アートのパワーと面白さ
ステーションピアノがひとつの形になった後のタイミングで、グループ会社に異動しました。異動してからも、今いる部署で日常の中の“面白さ”や“彩り”が生まれるようなことができないかと考えていたところ、今度はアートと関わるきっかけをもらいました。
当時は新橋駅の改良に伴う店舗開発を担当しており、その中で一定期間だけ暫定的にお店を出すエリアがあり、「お客さまに今しか、ここでしか体験してもらえない、インパクトのあることができないか」と話し合っていました。
暫定だからこそ、その空間のなかに頻繁に「変化」があれば、何度も通いたくなるのではないか。そんな思いからプロジェクトメンバーと一緒に考え、アートカンパニー「OVER ALLs」とコラボレーションして壁面のアートペインティングを行うことになりました。新橋のこの場所でしか見ることのできない特別な空間を作りたい。駅の中に描かれるアートだからこそできることをやりたい。そして、新橋というビジネスマンが多く行き交うまちで、家と会社をつなぐ場所でもある駅から、人々にエールを送りたい、といった気持ちがありました。そんな思いを「OVER ALLs」さんに相談し、自分の家族や自分自身の人生を重ね合わせられるような素敵なアートを描いていただきました。今はすでに新たな店舗空間に変わっていますが、当時の様子に興味をもってくださった方は、こちらもご覧いただければ嬉しいです。
(期間限定の店舗の壁面にアートが描き上がっていく様子。「新橋といえば」ということで、乾杯のシーンも盛り込んでもらいました)
実際に目の前で、それまで何もなかった壁にアートが描かれていく。そんなここでしかできないワクワクする体験を伝えたい。出来上がる過程を一緒に見ることで、アートへの愛着が湧く気持ちを少しでも多くの人に届けたい。その思いから、ある1つの挑戦をしました。それは、深夜にシャッターが閉まった後、駅構内でライブペインティングを実施し、それをSNSで生配信するという企画です。
見慣れた駅の風景にアーティストが絵を描いているという“非日常”な光景を、自分のスマートフォンを通して見る。「これって本当のことかな?」と半信半疑で翌日駅に向かうと、SNSで見ていた作品が、自分の見慣れた駅の景色の中に実際にある!そんな驚きと面白さを伝えたいという意図で実施しました。
結果的に深夜にも関わらず多くの方にインスタライブを見てもらい、チャレンジは大成功。私自身もライブペインティングを目の前で見ましたが、日常的に目にする「人が多く行き交う駅」とは表情を変え、人はおらず凛とした空気が漂う駅の中でアーティストの方が力強くアートを描きあげていく、その光景に本当に圧倒されました。そもそも、駅での深夜ライブ配信ができたこと自体も、多くの方の理解と協力があったからこそですが、そんなこともやろうと思えば実現できるんだなという自分の大きな経験にもなりました。この経験ももっと多くの人に体験してもらいたいと思っており、いずれまた何か仕掛けたいと密かに思っています。
(深夜の駅で描きあげられたアート。当時、暫定イベントスペースへの誘引といった意味も含めて制作しました)
ワクワクする気持ちを持ち続ける鍵は、目の前のことを全力で楽しむこと
「ステーションピアノ」も「ライブアートペインティング」も、チャンスが来た時にしっかりと思いを実現することができました。しかし、実施した時には想像できないほどの盛り上がりがある一方で、実現し続けることの難しさも感じています。今後はより継続性のあるものとして仕掛けていくことが、私自身の宿題だと思っています。
今までの経験を通じて確信していることが1つあります。それは、やはり自分が「楽しい」「素敵だ」と思えることを実現しようと思っているときは、どんな大変なことがあってもワクワクする気持ちがそれに勝り、頑張ることができるということです。
そういった意味では、前述した「渋谷ズンチャカ!」は私のやりたいこと、ワクワクを実現できる場所でもあります。今関心があることは、日本のクラフトビールの面白さ。私自身、もともとビールが大好きなのですが、以前東北のブルワリーの方から「まだまだこれから日本のビールは美味しくなるし面白くなる」と伺ったことがあり、まだまだ進化していくビールの世界を知りたいと、少しだけビールの勉強を始めていたんです。
そんな個人的な関心から、仕事でお世話になったクラフトビールのブルワリーの協力を経て、2021年には限定販売となりましたが「渋谷ズンチャカ!」オリジナルビールも作ってしまいました。これぞ、素晴らしい公私混同です(笑)。さらに、昨年実現できなかったアイディアとして、投げ銭ならぬ「投げビール」企画もあります。素敵な音楽の演奏者に対して、観客は拍手だけでなく、その演奏を聴いて一緒に飲みたいと思った味のビールをプレゼントして、演奏者と語り合う。その瞬間が生まれたら、すごく素敵なんじゃないかなと個人的にはワクワクしています。
今まで出会ってきた音楽、アート、ビール……最終的にはこれらをうまく繋げていけるようになりたいです。「すべてが繋がって一つのかたちになるにはどうすればいいのだろう?」「何が私をワクワクさせるのか」…まだまだ考えていきたいです。その道は長いかもしれないですが、少しずつ自分でできることから始めていきたいなと。広がった妄想を妄想で終わらせずに小さくても形にすることで、その時の達成感や更にこうしたい!という気持ちが生まれる。そしてそれが、次へのステップの原動力になるのではと思っています。
自分の見たいと思っている頭の中の光景を、いつか目の前に広がる風景として見られるように。自分のペースでこれからもチャレンジしていきたいと思っています。
田中 絹子(Kinuko Tanaka)
チームファンタジスタメンバー。2010年に東日本旅客鉄道(株)入社。現在は駅直近の店舗や複合施設の新規開発に携わる。2022年には、クラフトビールへの思いが溢れて自ら社長にアプローチした店舗が新橋駅に開業。社外の活動では、「渋谷ズンチャカ!」に2016年から運営スタッフとして携わる。最近ハマっていることはクラフトビールの飲み比べ。生産者の思いを知りながら、そのブルワリーならではのビールを美味しくいただく時間が至福の時間。「自らが一番楽しむイベントプランナー」というbeの肩書きをさらにアップデートするべく、様々な挑戦を続けている。
編集:大沼 芙実子
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